【広報コラム】

初心者向けかんたん物流コラム

トラックのCO2排出量削減が喫緊の課題に|生産性向上も同時に達成できる取り組みとは?


CO2排出量削減・脱炭素化への動きが急速に進む昨今。2020年10月には「2050年カーボンニュートラル宣言」、2021年6月には「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」がより具体化され、政策も明らかとなってきました。

もはや、脱炭素化は社会全体のテーマであり、持続可能な社会を目指す上で欠かせない取り組みだと言えます。物流業界・運送業界においても、特にトラックのCO2排出量削減への取り組みは以前から推進されていますが、CO2排出量削減のペースは他の業界と比べると遅れているため今後はより加速化することが望まれます。

CO2排出量削減・脱炭素化への国内の動向を振り返ると共に、個社でも行えるCO2排出量削減と生産性向上を同時に達成できる取り組みについてもご紹介いたします。



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CO2排出量削減・脱炭素化への動きが本格化

2020年10月、臨時国会で菅首相が「2050年カーボンニュートラル宣言」を行いました。

“「我が国は、2050年までに、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指すことを、ここに宣言いたします」”


これは、2050年までに、CO2やメタン、N2O(一酸化二窒素)、フロンガスを含む温室効果ガスの排出をプラスマイナスゼロにすることで、地球に優しい社会をつくろうというものです。

「プラスマイナスゼロ?」と思われた方は多いかと思いますが、どういうことかと言いますと、実際には温室効果ガスの排出量を減らすことはできても無くすことはできないため、CO2を吸収したり除去したりすることでプラスマイナスゼロ、実質ゼロにするということです。

温室効果ガスを大幅に削減することが大前提にありますが、例えば植林などでCO2の吸収量を増加させるなどして、両にらみで温室効果ガス0を目指していくことになります。

そして、2021年6月には、すでに策定されていた「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」がより具体化され、民間企業のイノベーションへの投資を促す支援策が打ち出されました。「2050年カーボンニュートラル」という大きな旗印のもと、長期にわたり環境も経済も持続的に良化させていくのが狙いです。

具体的には、「グリーンイノベーション基金」の創設や企業の脱炭素化投資を後押しする税制措置、新技術の社会導入をはばむ規制の緩和などが盛り込まれており、これらの政策が呼び水となり、民間企業による脱炭素化への研究開発や投資が活発化されることが期待されます。

また、「2050年カーボンニュートラル宣言」の背景にあるのは、気候変動問題に関する国際的な枠組みであるパリ協定です。パリ協定には、早期の温室効果ガス排出量のピークアウトと21世紀後半のカーボンニュートラルの実現が長期目標として掲げられており、日本も世界各国と同じくパリ協定の目標に沿うよう取り組みが進められています。

脱炭素化は、国際的な喫緊の課題として、さらには経済成長を促す機会として、実行に移すフェーズに入っています。

CO2排出量削減・脱炭素化への取り組みで企業への評価が大きく変わる時代に

「2050年カーボンニュートラル」という大きな旗印のもと政策が具体化され、CO2排出量削減・脱炭素化への動きが本格化してきましたが、近年は投資家が重視する評価基準にも変化が見られ「ESG投資」が世界で大きな広がりを見せています。

「ESG投資」は、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)を鑑みて投資先を選定する方法のことで、日本の市場においても2年で4.2倍増(約176兆円増)と増加傾向にあります。

ビジネスにおいて制約になるものと考えられていたESGが、投資の上で重視されるようになってきました。今までは、業績や財務状況が大きな評価基準として存在していましたが、これからは企業を長期的な視点で見た時には、財務情報に加え、「脱炭素化をはじめとした環境問題への取り組み」や「ダイバーシティの取り組み」などの非財務情報も必要だとする投資家が急速に増えてきたということです。

企業は利益を優先し追求してきた結果、環境問題をはじめとしたESGを疎かにしてきた側面があります。しかし時代が変わり、持続可能な社会の実現を目指す中においては、「利益をどのように得ているか」という点も注目されるようになってきました。



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トラック輸送におけるCO2排出量削減・脱炭素化|個社でできること

物流業界・運送業界に目を移すと、かねてからCO2排出量削減・脱炭素化という環境課題とは密接な関係があります。もとより、改正省エネ法などで環境負荷低減の要求が強くある業界ではありますが、脱炭素化が政策テーマのみならず社会全体でベクトルを合わせ推進すべき重要なテーマになった昨今の時勢を鑑みると、今後はより具体的な施策のもとCO2排出量削減・脱炭素化に努めていくことが、荷主や地域から、ひいては社会から求められるためには欠かせなくなりそうです。

では実際、個社においてはCO2排出量削減・脱炭素化に向けてどのようなことができるのでしょうか?

公益社団法人全日本トラック協会は、「カーボンニュートラルに向けた自動車政策検討会 トラック運送業界における認識と課題」という資料の中で、

“個々の事業者が脱炭素化に直接的に寄与できるのは、エコドライブの推進、環境性能の高い車両の導入、輸送効率化の推進が主要な対策。”

としています。しかし、車両の転換となると助成制度が拡充していない現状を鑑みると個々の事業者にとってはハードルが高いことから、現状で現実的に取り組みやすくかつ大きな効果を得られる余地があるのは輸送効率化でしょう。


そして、輸送効率化は共同配送やモーダルシフトだけではありません。配送計画の最適化もその一つです。

7月には、コンビニエンスストア大手のファミリーマートが、2020年度の配送トラックによるCO2排出量が2017年度対比で13.2%削減したと発表がありましたが、取り組みの中でクリーンディーゼル車両の導入と共に配送の効率化が挙げられていました。配送の効率化においては、TMSを導入し配送ルートの短縮や車両台数の削減の実施により、2017年度対比で走行距離が約15%、車両台数が約10%削減したとのことです。

EVトラックをはじめとした次世代車両の普及が物流業界・運送業界におけるCO2排出量削減・脱炭素化の施策の本丸として位置づけされていますが、いずれにせよこれだけでは十分とは言えません。輸送効率を向上させることも重要です。

人やトラック、エネルギーなど限られたリソースを最大効率で使うことは環境負荷低減と生産性向上を同時に達成できます。輸送効率化は、コスト削減や労働時間短縮にもつながるため運送事業者にとってもメリットの大きい施策だと言えます。普段の業務において見直せるところから、早期に実現できることから取り組んでみてはいかがでしょうか?


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