ロジスティクスAI 戦略のポイント
From:朴成浩
少々、更新に間が空いてしまいました。
実は、現在、新しいAIプロダクトの開発がいよいよ佳境に入っていまして
ついに! 来週の展示会、ロジスティクスソリューションフェアで皆様にお話しできると思います。
今度のテーマはズバリ、学習です!
というと、あれ?ライナさんは
「配車は機械学習じゃムリ!」
とか言ってませんでしたか??と突っ込まれそうですが、
実はその考えは全く変わりません。
じゃあ、一体、AIを何に使うんですか?というのが、今日の話です。
以前からお話ししているように、マシンラーニングだけで配車をするのは無理があります。現状のAIの学習技術だけでは、人工知能が人間の実績から学んでベテラン同等の配車をする、なんてことは不可能です。
よく、囲碁や将棋でも誤解されているのですが、AIが学習だけで人間より強くなるなんてことはありません。学習はあくまでもAIの技術要素の一つにしか過ぎないのです。
人間の知性はさまざまな機能から成り立っています。
特に、優れた配送計画を立案する、あるいは良い囲碁の指し手を指す、こうしたいわば「勘と経験」仕事、つまり経験によって培われた勘によって行われる意志決定には、大きくは2つの機能が必要になります。
「知識」と「判断」です。
たとえば、私たちの研究対象としている配車組みでは、与えられた前提条件、たとえば、配送先店舗の立地であるとか、軒先条件であるとか、そうしたものを元に、どのようなコース組みを行えば無理なく、かつ効率の良いルートを作れるのか?を考えますが、この組み立てを考えるのが「判断」の部分です。
今のところ、配車に限らず世の中の多くの業務で、この「判断」の部分を学習で肩代わりすることはできていない、というのが現状です。
そう言うと、
いや、待って下さい。最近は、ディープラーニングが「判断」の部分においても目覚ましい成果を上げていますよね? 犬と猫を見分けるとか、ああいう高度な判断も学習でできるようになったじゃないですか?
と思われる方もいるかもしれません。しかし、ディープラーニングが成功するためには、実は絶対的な必要条件があります。ご存じでしょうか?
よく言われるのは、
ディープラーニングは膨大な教師データ(実績データ)が必要である
ということです。しかし、これは単に労力とかの問題を抜きにしても、実はものすごく難しいことなのです。
膨大なデータを集めることの本質的な難しさとは何でしょうか? それは、
膨大なデータを集めている間、ゲームのルールが変わってはいけない
というところにあります。
犬猫の判別にしても、囲碁にしても、何万回やっても犬は犬だし、囲碁は囲碁。ゲームのルールは変わりませんよね? 何度やってもゲームのルールが変わらないからこそ、膨大なデータを作ることができるのです。
ところが、配車に限ったことではありませんが、私たちが日常で直面する業務、特にロジスティクスの現場で生じる課題には、そのような再現性はありません。永続する取引、不滅の貨物量なんてあり得ないですよね? ゲームのルールなんて毎日変わる。それがロジスティクスの世界のスリリングな現実です。
このように、「判断」の部分 — どのようにしたら配車という「パズル」を綺麗に並べることができるか? — については、現状、学習で肩代わりさせることは難しいのです。
(だからこそ私たちはこの「判断」の部分には「組み合わせ最適化」というもう一つのアプローチを採用しています)
一方で、その「判断」の前提となる「知識」の部分、たとえば配送先に対する時間指定などの制限事項については、そこまで膨大な教師データがなくても学習は可能です。極端な話、ほんの数日分の配送実績からだけでも学べる知識はたくさんあるわけです。
ロジスティクスの世界で見られる知識、いわゆる暗黙知には、それぞれ独特の性質があります。知識の種類によって適用すべき学習技術をさまざまに使い分けていかなくてはなりません。私たちが提供するのは、そうしたロジスティクスの知識に特化して、さまざまな学習技術を最適に使い分ける学習エンジンです。
今まで、自動配車の導入においては、
「データが作れない!」
「マスタ整備ができない!」
という、「知識」の部分の整備の難しさが大きなハードルとなることがしばしばでした。その状況が、これからどんどん変わっていきます。乞うご期待!でお待ちください!
追伸:
本文中でも書きましたが、来週8月29日(火)・30日(水)の2日間、東京ビッグサイトで開催される「ロジスティクスソリューションフェア2017」に当社も出展します。
会期中、29日(火)には、
「自動配車システム「LYNA 自動配車デスクトップ」の活用事例 ~AIで配車はこう変わる~」
というセミナーを開催させて頂き、僭越ながら私が講師を務めさせて頂きます。皆様、是非ふるってご来場ください!
++朴成浩