【社長コラム】

ロジスティクスAI 戦略のポイント

企業競争力を高めるためにロジスティクスはどうあるべきか


From:朴成浩


新年あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。


2018年は年初から株も大きく上がり、明るい見通しの1年になるのではと期待されている方も多いのではないでしょうか?


もちろん、株が世間一般の景気に直結するわけではありませんが、実は景気の良い分野、業界は意外に多いのではないかと考えます。


ロジスティクス分野についても、良いところは良い、という印象ですね。


一昔前とは異なり、もはやロジスティクスが単なるコストセンターである、と考える企業は少ないでしょう。ロジスティクスは現代企業においては間違いなく競争力のキーとなる部分です。


とはいえ、では、実際にどのようにしてロジスティクスが企業の競争力に結びつくのでしょうか?



荷主要望、品質、コスト、どれが一番大事?


どのようにしてロジスティクスは自社(あるいは荷主・グループ全体)の競争力に結びつくのか?


この問いに対して、具体的な答えを持っている人は意外に少ないように見受けられます。しかし、この問いは、荷主企業だけでなく、提案側のロジスティクス企業こそが真剣に考えるべき問題です。


ロジスティクスの使命とは何でしょうか?


「荷主の望む通りに運ぶこと」でしょうか?

「適切な品質」でしょうか?

「ローコスト」でしょうか?


言うまでもなく、これらは全て矛盾する要求です。では、一番、大事なのは何でしょうか?


個人的な意見になりますが、多くの場合、まず絶対に欠かせないのは「適切な品質」であると思います。顧客満足に直結することはもちろん、特に、「適法」や「安全」という品質を損ねてしまうと、昨今のSNS時代では事業そのものの継続が難しい状況に陥りかねないわけです。Too muchではない「適切な品質」は現代ロジスティクスにおける最重要事項です。


ただ、とはいえ、たとえば分かりやすい例として国際輸送における航空便に対する船便のように、もしコストに圧倒的な違いがある場合は品質さえも絶対の条件とはならないわけです。


このように上記の3要素はどれが一番、大事ということはなく、あくまでもバランスが重要です。ところが、実際の現場では「荷主の望む通りに運ぶこと」が神聖冒すべからずのぶっちぎりの第一条件になっていることが非常に多いように感じます。


「いや、そんなの当たり前でしょう?」と怒られそうですが、そう感じられる方こそ、是非一度、大胆にももし「必ず運ぶ」ということを止めたら何が得られるか、を考えてみて下さい。


まず間違いなく必要な輸送リソースおよびコストは大きく減りますよね。


多くのロジスティクス現場では、突発的な需要変動に備えて(言い方は悪いですが)余分なリソースを確保しているのが常です。


(もし万一、「いや、毎日毎日、全く余分なリソースなんてないんですが?」という場合は、品質、特に労働環境が犠牲になっている可能性が大です。将来的に大きな問題を引き起こしかねないので、早急に点検が必要です!)


なお、余分なリソースがある、とは必ずしも物理的に車両が余っているということではないことに注意して下さい。たとえば、本来、効率よく輸送すれば 10台 x 8時間 で輸送できるはずのところを、いつも12台使っているからということで12台で平準化して輸送していたとすると、1~2台分のリソースを余分に持っているということになります。



「必ず運ぶ」は必ずしも競争力向上に結び付かない


また、見逃せない点として、もし「必ず運ぶ」ということをやめたとすると、配車業務の負荷も大きく下がります。


多くの現場で、配車マンは需給調整に追われていることと思います。常用として確保していない輸送リソースを超える荷物に対する輸送リソースをどうやって手配するかは配車マンの腕の見せ所ですが、逆に言うと、手配力の弱い非力な配車マンの場合は「いざ」というときに手配できないことを見越して常用でさらに余分なリソースを抱えておかないといけないことになるわけです。


だからこそ、多くの企業で「腕っぷしの強い」配車マンが待望されるわけですが、そもそもなぜそういう実力の高い配車マンが必要になるか、ということの元をたどれば、「必ず運ぶ」ということが絶対条件になってしまっている状況に行き着くわけです。


ここで、もう一度、企業競争力とロジスティクスがどう結びつくのか、という最初の問いを考えてみてください。


企業競争力を向上させるようなロジスティクスとは、必ずしも営業や製造側の都合を何が何でも100%実現するようなものではありません。極論を言えば、コストさえかければ、あるいはロジスティクス品質や現場の労働環境を無視すれば、上流サイドの要望はいくらでも実現できてしまうからです。


しかし、それでは企業あるいはグループ全体の競争力は損なわれてしまいますよね。何が何でも運ぶ、どんな無理でも聞く、ということは、必ずしも企業競争力の向上に結びつくわけではないのです。


もし「必ず運ぶ」ということをやめたとすると、何が起こるか?


昨年の物流クライシスにあっては、単に思考実験に留まらず、実際に「運ばない」という方向に進んだ企業も出てきました。もちろん、多くのロジスティクス企業にとって「運ばない」という選択は現実的ではありません。しかし、この思考実験は、企業競争力を向上させるためのロジスティクスのあり方、そしてそのために自社は今、何をするべきか、ということを考える格好の課題であると言えます。


ロジスティクス業界の昨年の大きな動きとして、「運ばない」というテーマを年頭挨拶に取り上げましたが、いずれにしても現在、ロジスティクス業界は物流二法以来の大きな変革期の最中にあると思います。この荒波を飛躍のビッグウェーブへと変えられるよう、皆様と共に粉骨砕身、努めてまいりますので、本年も何卒よろしくお願い申し上げます。



2018年1月

株式会社ライナロジクス

代表取締役 朴成浩



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